ふしぎな花屋

hanaya やっと書ける話

パラすみが高校時代のお話です。

高校へは元気なときは自転車、しんどい時と真夏真冬はバスで通っていました。

あれは春休みだったと思います。その日はめずらしく午前中で部活が終わり、帰宅することになりました。いつもは誰かと一緒が多いのですが、その日はみんなバスで、自転車は私だけでした。

土曜日だったかもしれません。夕方から、中学の友達の演奏会を聞きに行く予定でした。

のんびりとした空気感の中、ひとりで自転車を走らせていると、ガラスの向こうに赤い花がチラッと見えたのです。

『あ、お花屋さん?』

自転車から降りて、少し後戻りして、中を覗いてみました。

出入り口は透明ガラスが入った、焦げ茶色のサッシが4枚、引違いになっています。

看板も何もなく、以前なにかのお商売をされてたのかな?という間口の広さです。

セメントの土間に、赤いバラとカスミ草だけが置かれていました。他のお花はありません。

バラだけ?とちょっと不思議でした。でも演奏会で友達に渡す花束を、どこかで買おうと思っていたので、中へ入ってみました。

こんにちは、と声を掛けると奥からおばあさんが出てきました。

「バラとカスミ草で小さい花束作っていただけますか?予算は○円なんですけど」

「はいはい、できますよ」

おばあさんは、すぐに花束を作り始めました。

とても慣れた手付きでバラをまとめて、周りをカスミ草で飾りました。

白い紐でクルクル、キュッとくくり、飛び出た茎をまとめてバチンと切りました。

私は見事な手さばきやなぁ〜と、ずっと見ていました。

rose-hanataba

透明のフィルムで包んで、リボンをかけて出来上がりです。

仕上がった花束は、絶対に予算オーバーであろう立派なものでした。

おばあさんにお礼を言って、その日の夜、バラの花束を持って演奏会へ行きました。

受付で花束を預け、お祝いメッセージ紹介でも名前を言ってもらいました。

絶対に。

数日後、自転車での帰り道、あのお花屋さんの前を通って帰ろうとしました。

kaerimichi

でも、あったはずの場所にお花屋さんがないのです。

道を間違えたか?そのあたりをグルグルと自転車で走り、花屋さんを探しました。

やっぱりありません。

花屋さんがないというか、花屋さんのあった道自体ないような気がします。

どういうこと??

納得できませんでした。

それから何度も探しに行きました。地域地図を買って、歩いてローラー作戦で探したりもしました。

でも、ないんです。

何年も後、子供が幼稚園に行ってるあいだに、探しに行ったこともあります。

近所の人に聞いても、知らないという返事。

いったいあの花屋は、どこに行ってしまったのでしょう?

いえ違いますね。私はどこに迷い込んだのでしょうか。

これがパラレルなのかは、今もわかりません。

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