玉姫島では梅雨入りを前に、住民さんたちが乾いた枝集めに精を出しています。
DIYや焚き付けに使うみたいです。のんびりと枝を集めて歩く姿は、見ているだけで癒やされます。
さて、引っ越してきた新しい住民さんは、大工さんだとおっしゃっていました。待望の職人さんです。
さっそくご挨拶に伺うと、鳩の巣コーヒーで一服の最中でした。
「よう、おねえ。ここはのんびりしたいいところだな。これからよろしくな」
「玉姫島へようこそ。こちらこそよろしくね」
「今日のところは仮設住宅で、明日中にはちゃんとした家ができる予定だからよ。その時、また来てくれよ」
「わかったわ。セルフビルドなん?さすが大工さんやね」
「?? いや、たぬき開発に頼んでるよ」
「あれ?そうなの?」
とりあえずあいさつだけして家を出て、ちょっと不思議に思いました。
(大工なのに自分で建てないのかなぁ?)
そういえば、大工にしては小さな工具類しかなかったような気が…
次の日の朝、もう一度行ってみると、ログハウス風のおうちが出来上がっていました。
家の前には、手作りしたようなおもちゃが陳列されていますよ?あれ?これは、おもちゃ屋さんの雰囲気だが?まさか…
慌ててたぬきちに電話で確認してみました。
「もしもし、たぬきちさん?新住民の人って大工さんだよね?」
「そうだなも、ダイクさんという名前の玩具職人さんだなも」
「ええーっ!もしかしてわたし、やらかした?」
「そういうことだなも。まあこれがおねえさんの平常運転だなもね。うんうん」
「ほんま…ごめん」
たぬきちは意外に腹が太ってるから、いや、太っ腹だから、この程度のことでネチネチ言うことはありません。そういうところは助かります。
では、新たな気持ちで訪問しましょう。
「ダイクさん、おはよーございまs…!!!!」
「ひょえ~〜!ゥ、ウズメさん!?」
びっくりしすぎてポカンと突っ立っていると、ウズメさんが
「あらヤダ、島のみんなにはナイショよん(言いふらしてくれていいのよ)」
そう言いながら、うつむき加減にモジモジしています。よく見ると白無垢に身を包んでいるじゃないっすか?初手王手か!
ダイクさんは「おい、助けてくれ」と目で訴えかけてきます。
「いやいや、無理っす」と目で返します。
すると、諦めたように目を閉じて、ため息をつくダイクさん。
この人、情に流されるタイプかもしれん。
ウズメさんはニッコニコである。
次の日の朝も、白無垢姿で朝のパンを持ったウズメさんが、ダイクさんの家の周りをグルグルまわっている姿を、多数の島民が目撃しましたとさ。
一方そのころダイクさんは
ウズメさんにフェイントをかけるべく、早起きして浜辺で時間をつぶすのでした。
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