黒い服の中年女性とイッキは、時々夢に現れました。
また私の意識の中で会ったりもしていました。目を開けてても閉じてても、おでこの少し上あたりのスクリーンで見る感じでしょうか。
黒衣の女性の父親は、拝み屋とかのジャンルの人のようです。依頼を受けて報酬をもらい、ターゲットに憑物を飛ばすという、なんとも因果な商売です。
女性の兄弟はみんな逃げたり、亡くなったりで、彼女が最後の子供です。父親は自分より能力のある娘に全部やらせています。でも彼女は本当はこんなことやりたくない。だけど、できません。父親が事あるごとに言うのです。
「逃げれば鬼が追ってくるぞ」
黒衣の女性は会うたびに涙をこぼしました。
イッキにも話を聞きました。
「我は助ける。この一族を。我と同じ血筋。やられる前に」
イッキはたいがい威圧的で、怒りスイッチが入って話にならないときもありました。要約すると、だいたいこんな感じです。
遠い昔、鬼の混血一族が(エネルギー)攻撃の標的になった。
↓
攻撃が跳ね返り送り主に行くよう術をかけた。
↓
送り主、返ってきた自らの攻撃に激怒。やられた!
↓
以下、同じことの繰り返し。時々はイッキ側からも攻撃してたみたい。
(術は呪いではなくて、そういう設定。結界、シールドみたいな?)
「相手はどこの誰なん?」
「この一族」と見せてくれたのは、全体的にねずみ色がテーマカラーの重ーい波動の男性たち。敵対、警戒一色で、報復だ!報復だ!我々は被害者だと言っている。
もはや、どちらから始めたかもわからないらしい。
双方、守るものがあるという正当な理由。不毛な術の掛け合い…
これ、何なん?もうやめたら?
そのころ私が見えない世界でしていたことは、終わりのないドブさらいでした。
双方ともドブ、さらってもさらってもドブが溢れてくる。
「なんで私、こんなしんどいことやってるんやろ?」
でもやめるわけにはいきませんでした。なぜなら、ねずみ色の一族の波動は、母親のそれとそっくりだったからです。
そういえば母親の口癖はこんなでした。
「仕返しして当然や。お母さんには仕返しする権利がある」
本当に、相手が悪気なく言った一言に対してでも、数ヶ月前のことでも、必ず仕返ししていました。私達も数え切れないくらい受けました。
どうやら因縁の敵同士が、ひとつの家族になったようです。そんなことってありますか?
母親は有言実行、祖母に、父に、弟に、私に仕返しをしていたのかもしれません。自覚はなかったでしょう。損な役回りと言えなくもないです。
ここまで母親にはあまり触れませんでした。やることのレベルが一般人の想像をはるかに超えているので、これからも書きません。私がカウンセリングを受けていた、臨床心理士さんでも顔色が悪く気持ち悪くなるほどなので。
私には息子がいます。
私の代で解決しておかないと、息子に持ち越す可能性がないとは言い切れません。
それだけは絶対に、命をかけても回避すると決めました。
ずいぶんとドブさらいをやったころ、双方一堂に会して和睦してはどうか、とイッキに提案してみました。
イッキは渋々了承してくれました。
双方十数人が向かい合い正座しています。
イッキ達が深々と頭を下げ詫びると、ねずみ色一族も頭を下げていました。
だけど、なんとなくねずみさん達、微妙に納得してないような雰囲気もありました。
でもとりあえず、長年の縁のからまりがほどけて良かったなと、ホッとしました。
それから急に現実が動きはじめ、事実上、母親と縁を切ることができました。このときも大変でした。50才ごろのことです。そこからようやく、自分の人生は自分のものだと思えるようになりました。
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