先日、鍼灸治療へ行くため電車に乗っていました。
通勤通学の混み合う時間帯ではなかったので、席が結構空いていました。
ロングシートに腰掛けると、前の景色が目に入ります(そらそうでしょうよ)
向かいのシートでは、端に若い男性が座ってスマホを見ていました。
すぐ横のドアの前には、70歳前後ぐらいのほっそりした女性が立っていました。
体型とファッションから、そのぐらいの年代に見えました。
白い細めのパンツに薄紫のチュニック。薄いピンクの帽子と、その年代の人が持ってそうなリュックを背負っていました。
(こんなに空いてるのに、座らないのかな?)
ちょっとそう思いましたが、見たい景色があるのかもしれませんからね。特におかしくはありません。
電車が私の降りる駅に停ると、その女性も先頭で下車しました。
すぐそばにエスカレーターがあったので、下車した人々は揃ってそちらの方へ歩き出しました。
先頭にその女性が乗って、すぐ後ろに大学生ぐらいの女性が乗って、そのまたすぐ後ろに私が乗りました。
ふたり前にドア前の女性がいるなぁ、と何となく認識しつつ、一瞬下へ視線を外しました。
すぐまた前を見ると、もうドア前の女性はいませんでした。
エスカレーターの降り口は、まだまだです。
(!??)
思わずエスカレーターの左側を急いで上がって、あの女性を探しました。
四方八方ぐるっと見たけど、そんな人はどこにもいません。
(どーゆーこと?)
キョロキョロ、アセアセ周りを見ている私のほうが、むしろ不審者です。
(消えたな)
そう、そういえば、社内でずっと同じポーズのまま立ってたよな。
一度も顔を見ていない。電車から降りる時も、エスカレーターに乗る時も、顔を見た気がしない。
一瞬でエスカレーターをダッシュで駆け上がり、改札を駆け抜けた、またはトイレに駆け込んだとは考えにくい。なぜならどちらもそこそこ距離があるから。年齢的にも無理だと思う。
だとすると、久しぶりに見たな。この世の人ではない人を。
最初の方に感じた微かな違和感は、それだったのかもしれません。
エスカレーターで私の前に立っていた若い女性には、見えてなかったのかも。たぶんですけど。
本当に久しぶりでした。顔を見せないのは、顔を見せるとバレちゃう確率が高くなるからかな。
ちょっとした、消えてしまった人のお話でした。
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