今から1年ちょっと前、島の案内所のたぬきちさんから電話がかかってきました。
「ちょっと案内所まで来てほしいだなも」
急いで行ってみると、知らない女の子がいました。なんかただならぬ雰囲気です。
「お願いです!この島に住まわせてください!」
「ここで10島目なんです。今まで全部ダメだって言われて!行くところがないの!お願い、たぬきさん!」
「そう言われてもだなも… あなた未成年でしょ?親御さんの許可がないとだなも」
「うわーーーん」
女の子はワンワンと大泣きし始めました。
「お、おねえさん!ここではアレだから、連れて帰って話を聞いてあげてちょうだい!」
「はい?わたしが!?」
このタヌキは面倒なことを丸投げする癖があるのです。やめてくれないかなぁ。でもまあ、泣いてる子を置いて帰るのも気が引けるし、一緒に案内所を出ました。
(しかし、この子、とんでもなくボロボロやな)
汚れきったワンピースに、穴のあいたソックスとビーチサンダル。おまけに髪は大爆発。
「あなた名前は?」
「うわ〜〜〜〜ん」
「名前!」
「うっ、うっ、マリア」
マリアと名乗る子はポツポツと話し始めました。
中学の卒業式から家に帰ると、家財道具一式なくなってて、待てど暮らせ両親は帰って来なかった。携帯電話も通じない。途方に暮れていると、男性たちが差し押さえにやってきた。差し押さえ?ナニソレ?要するにパパとママは借金を踏み倒して逃げたらしい。あたしを置いて!
「あたしも逃げなきゃ」
とっさにマリアはそう思ったらしい。
それで着の身着のまま、わずかな所持金で本島を脱出し、居場所を求めて野宿で島を渡り歩いていたという。でも、どの島も住ませてくれなかった。所持金も底をついた。
ある島の桟橋でボーッとしていたら、船がやってきた。
「その船のカッパのおじさんが、次の島まで送ってくれるって言ったの。それでこの島に着いたの」
「オラがしてやれるのはここまでだ。案内所に行ってみな」
「うん、カッパさんありがとう」
「ぐっどらっく」
こんな感じでマリアは玉姫島にやってきました。
本人がどうしてもここに住むと言ってきかないので、たぬきちが関係各所との調整を頑張ってくれました。「痩せる思いだなも」とぼやきながらも、最終的に両親を捜し出して戸籍を分け、マリアが島にいられるようにしてくれました。
たまたまうちの隣が空き家だったので、マリアはそこに住むことになりました。
少し遅れて通信制の高校に入学し、そのころからスマホひとつでライブ配信とやらを始めました。少しすると広告収入が入りだし、そのお金で機材をいろいろ買い揃えていったみたいです。
今ではそこそこ人気の配信者みたいですよ。
通信制高校で授業はほぼオンライン。制服はないのに、なぜかいつも制服を着ています。
「なあマリア、なんでいつも制服っぽいの、着てるん?」
「だって制服が似合う時期って、今だけでしょ?」
「今が旬だし、自分でも似合ってると思うし、視聴者さんのウケもいいのよね〜」
「まあ、確かに似合ってるな」
「そうでしょ?ありがと♪」
はい!おねねに替わりまして、ここからはマリアがお届けします!
毎日の晩ごはんは、だいたいおねねの家で食べます!
手の込んだものはあんまりないけど、どれもとても美味しいんだよ。
何でも作ってもらえるだけで幸せ♡
お腹がいっぱいになったら眠くなるから、、、
ちょっとうたた寝して。気持ちいいのよね。
温泉に入ってから帰るのです。
掛け流しって言うの?1日中湧いてて、すごくあったまる温泉です。
ここは島の女子全員が使えます。でも動物女子たちはあまり来ないかな。濡れるのがイヤなのかもね。
ご飯もお風呂も、甘えすぎ!!って叱られそうだけど、そのかわりにこの温泉を掃除する約束だから。毎日だよ?けっこう広いから大変なんだよ?
でも、汗かくからサウナ効果でお肌ツルツルになるんだよね。一石二鳥って、こういうこと?
玉姫島は田舎だし遊ぶところもないけど、気に入ってるの。
インターネットでつながってるみんなも、リアルな周りの人たちも、どっちも大切に思うよ。
どこにいるのかよくわからない親より、すぐ近くの人を大切にしたほうが幸せみは深い。
この島に住みたいって頑張って良かったよ。あの時の自分をほめてあげたいです。
みんなも玉姫島に遊びに来てね。
夢番地:DA-4620-8705-5400
※ハシゴなくても回れますが一応空港前に置いてます。お使いください。
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