今日は短いお話3つです。
地球を見に行った話
中学時代のある夜、寝ていた私は誰かに声を掛けられました。
「行きますよ」
眠たいのにな、どこ行くんかな、と思いながら目を開けると、家の上に浮いていました。
隣には起こしにきた人の気配がします。見て確認しなくても、いるんです。
その人と一緒に近くのアパートを上から見下ろして通り過ぎました。同級生が住んでるアパートです。へぇ〜、上から見たらこんななってるんやな。
斜め下に中学のグランドがちらっと見えたら、ぐんぐん地面から離れていきました。
あるところでホースみたいなものに、スポッと吸い込まれました。掃除機のホースのようにあっという間に送られていきます。私はぎゅっと目をつむっていました。
突然、ポンと放り出された感覚があって、体もまわりもシーンと静かになりました。いままで感じたことのないような、全くの無音です。とても心地良い感覚です。
となりの人が「見なさい」と言った気がして目を開けました。
少し見下ろす位置に地球がありました。
青というほど青くなく、引っ張って薄くうすーく伸ばした綿が掛かっているみたい。明るいところと暗いところのグラデーションがきれいやな、と思いました。
そのあと、となりの人は何か言ってたような気がするけど、まったく記憶にありません。
そう言われても…な話
もう30年ぐらい前のことです。
当時は離婚した直後で、息子は6、7才。ふたりで公営住宅に住んでいました。
ある日の夜、とてもリアルな夢を見ました。
夢の中で、洗面所のほうから物音がするので見に行きました。すると知らない男が洗面所から飛び出してきて、玄関から走って逃げていきます。泥棒!?私は追いかけました。
外階段から下を見ると、近所のおじさんがいたので「捕まえてー」と叫ぶと、取り押さえてくれました。追いついてその男の顔を見て、愕然としました。絶対に同じ人物なのに、さっきと顔がまったく違うんです。全くの別人としか言いようがないくらい違いました。
私がポカーンとしているうちに男は逃げてしまいました。はっと視線を感じてそっちを見ると、屋根の上に銀色の人型が何人か立っていました。ボーリングのピンみたいに一列目ひとり、二列目ふたり、三列目3人と。地球の人じゃないと思いました。
その先頭の人型が心に話しかけてきました。
「今のを見ただろう?(外見を)自在に変えられる技術がある。これを教えたのはロシアのエ○○○(エで始まる女性の名前)とお前だけだ」
名前はよく聞き取れませんでした。
私は貴重な睡眠を邪魔されて、少し腹が立ちました。
「で?今、子育てと仕事と家事で毎日めっちゃ忙しいねん。いらんこと言いにこんといて!」
それから二度と現れませんでした。
乗せてもらった話
ずっとずっと昔のことです。
私、地球に来る前はいろいろあって次元を漂ってました。
すると大きな宇宙船が近づいてきて、「乗るかい?」と声をかけてくれたのです。
それで、なんとなく乗せてもらったんです。どこへ行くのかも知らないままにです。
まず面談室のような空間で、浅黒い肌のツルっとした人型に会いました。
その人は言いました。「わたしはこの船の knowledge です」
wisdom ではなくて knowledge だそうです。
好きなだけここにいて良いと言っていました。
船は無数の次元を行き来しながら、時々乗り降りのためにどこかの星に立ち寄っていました。
ある時、一緒に乗っていた人たちが、次の星で降りると話しているのを聞きました。
結構大勢がその星で乗り降りするようです。人気があるみたいです。
人気の理由がちょっと気になって、私もその星で船を降りることにしました。
それが地球です。
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